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「女性エンジニアが少ないとやる気が出ない」発言は何がヤバイのか

logmi.jp

先月炎上してた話題についての感想。

一見すると「みんな過剰に反応しすぎでは?」と思ったし、コメント見ても「何が問題なの?」と感じてる人がいたので、何が問題なのか考えてみた。的外れだったらごめんね。

炎上案件をざっと説明すると、4月に開催された技術カンファレンスで「女性エンジニアが少ないと男性エンジニアのやる気が出ないし、女性同士は女子トークもできない。だから男性エンジニアの声を機械学習で女性の声に変換しよう」という講演があり、それに対して「女性エンジニアは男性エンジニアのやる気を出すために存在してるわけではない」などの批判が起こった、というものです。講演のニュアンスは上記の記事から、詳しい経緯は下の関連記事をどうぞ。

前置きとして

「やる気出ない」発言をした男性エンジニアは、決して女性エンジニアを軽視しているわけではないと思います。それは、炎上した講演が「論理破綻を前提としたネタ」だからです。

論理破綻を前提としたネタとは、例えば「会社を休む理由を瞬時に出してくれるマシーン」や「画像認識AIで綾鷹を選ばせる」といったものがそうで、難しげな技術に興味を持ってもらうのによく使われる方法です。そこでは、技術に比べて提起される問題がくだらなければくだらない(=解決する必要性がない)ほどキャッチーで、「いやそもそも前提がおかしいよね笑」という認識が面白さに繋がっています。炎上案件に関しても同じで、「異性がいると嬉しいよねー」というプライベートな気持ちこそあれ、それを本気で職場に持ち込もうとは思ってないし、女性エンジニアが全員「女子トークがしたい」とも別に思ってない、という前提があったのではないかと思います。

仮に、男性と女性を逆にしたらどうでしょうか。「看護師が全員抱えてる最も重要な課題は『男性看護師が少ない』。女性看護師はやる気が出ないし、男性は筋肉トークができない」や「男性エンジニアが少ないので女性エンジニアはやる気が出ない」みたいな感じでしょうか。恐らく鼻で笑いこそしても、怒る男性ってのは少ないと思いますし、コメントで「些細なこと」と擁護する人も、ここに書いたような考えを持っているのだろうと思います。

では、どうして反応してしまう人がいるのか

今回の大きなポイントは「女性の存在は男性のやる気を上げる効果がある」という主張に対して「女性は男性のやる気を上げる役目がある」と受け取ってしまった人がいることです。意見が分かれるのは、擁護派の「効果≠役目」と批難派の「効果=役目」という認識の乖離が原因のような気がします。

じゃあ、どうして批難派が効果と役目を区別しないかというと、フェミニズムの活動からも分かるように、女性は「女性」というだけで消費され抑圧・強制されてきた社会的背景があるからです。男性が喜ぶ(=効果)からお茶汲み(=役目)を強いられるとか、男性の機嫌をとる(=効果)ために飲み会で上司の隣に座らされる(=役目)とか、「効果=役目」と認識してしまう土台が作られているのではないかと。「発言を悪い方に取りすぎ」と考える擁護派が思うよりも、批難派は「女性が置かれている社会的立場」に対して重く考えているということではないでしょうか。

加害者がいう「悪気はなかった」について

重要なのは、発言者には悪気が1ミリもないという点です。むしろ、そういった差別的な意識がないからこそ発言してしまうとも言えます。炎上した彼は「女性の置かれてる社会的立場」に対して理解が浅かったからこそ「会社内(社会)での女性の役割」という、かなりの地雷原にダッシュで突っ込んでしまったワケで、よく聞く「職場で女性の容姿を褒めたらセクハラ扱いされてしまった!そんなつもりないのに」問題と根本は同じだと思います。痴漢にあったりナンパされたり、男性が思うよりも女性は「好意を持たない男性から異性(性的対象)として見られがち」で、そんな中で女性に対し異性として魅力的だと伝えることは、自ら進んで地雷原を駆け抜け、汚い花火になるようなものです。

「女性」の対義語は「男性」ではない

このような問題は、女性に対するものだけでなく、男性に対しても起こっています。例えば「イケメン」という言葉。この言葉は明らかに「女性を喜ばせる役目」として使われている節があって、ステレオタイプな「女性」の対義語は、「男性」ではなく、むしろ「イケメン」の方が近いのではないかと個人的には思っています

問題の発言に倣いますが、もし発せられたのが「女性エンジニアが抱えている課題は、イケメンエンジニアが少ないこと。これでは女性エンジニアのやる気は出ない」だったらどうでしょうか。イラッとくる人は増えるんじゃないかと思います。別に俺たちはお前らを喜ばせるためにいるんじゃねーよと。特に「男性(イケメン)」というステレオタイプに当てはまらない人達にとっては、「うーん」みたいな。(あまり取り沙汰されない問題ですが、それは「男性よイケメンたれ!」という思想の強制力が低いだけで、同じく批判されるべき問題だと思います)

裸足で地雷原に飛び込まないために

男性・女性という「性別」や、エンジニア・看護師・学生などの「職業」、スポーツマン・ロック好き・喫煙家といった「趣味嗜好」、若者・中高年などの「世代」…というように、誰でもいくつものグループに属しています。そこには、グループ外からのステレオタイプな目の向けられ方と、外からは理解しづらいグループ当事者が受ける抑圧や不利益があるはずです。

ステレオタイプ的な考え方をしてしまうのは脳の働き上仕方のないことですが、そのステレオタイプに対して自覚的になるのことが地雷を避けるための出発点だと思います。例えば「日本人」「オタク」「エンジニア」「デザイナー」「ゆとり」といった単語を聞いてパッと思い浮かぶそれぞれのイメージで話を進めるのではなくて、偏見に満ちたものであると一旦立ち止まることが大切じゃないかと。特にメディアから受け取る情報は、特定のグループに分かりやすいラベルが貼られたものであることが多いです。モテない東大生が女性と合コンとか、新入社員のありえない行動!みたいな切り取られ方は枚挙にいとまがないですし。あとは、「男性」「女性」といったグループに視点を持つのではなく、「わたし」「あなた」といった個に視点を持つとかでしょうか。

とはいえ、誰しも地雷を踏んでしまう可能性はあるわけで、地雷の爆破音に対して、もうちょっと寛大になっても良いというか、批判はしても叩き潰したりはしないように努めることも必要だと思います。悪意があったり直接的な不利益を受けたのなら全力で行くべきですけど、そうでもないのに、最近のネットは何か問題が起きたら一発アウトで完膚なきまでに叩きつぶす、肉片一つ残さない的な風潮があるように感じるので、それって誰も幸せに幸せにならないよねと思います。誰もが聖人君主ではないので、非があったらそれを認めつつ一緒に前進して行けた方が幸せかなーと。世界が平和でありますように。